——若手現場監督へ伝えたいこと
前回、突貫現場の話を書いた。今回はその続きとして、もう少し踏み込んだ話をしたいと思う。
「足し算の工程」と「引き算の工程」——この二つの言葉で、工程管理の本質を考えてみてほしい。
足し算の工程とは
マンションや大規模工事で多く見られる工程管理のスタイルではないかと思う。基礎が終わったら躯体へ、躯体が終わったら仕上げへ——順番通りに積み上げていく。月間工程表を作り、その通りに進めていく。
これは決して間違いではない。むしろ大規模工事においては、緻密な積み上げこそが品質と安全を守る基盤になると感じている。
しかし一つ、気になることがある。
月間工程表に縛られるあまり、全体工程表が見えなくなることがある。目の前の一ヶ月を突き進む。しかしその先に何があるか、どこが急所になるかが見えていない。その結果、クリティカルパスを見失ってしまう。
さらに問題なのは、規格的なマンション工事ばかりを経験してきた現場では、自分で作った工程表が絶対だという思い込みが生まれやすいことではないかと思っている。臨機応変な判断を学ぶ機会が、なかなか得られないのだ。
引き算の工程とは
では引き算の工程とは何か。
竣工日や開店日というゴールから逆算して、各イベントを管理していく考え方ではないかと思っている。
| # | 主要イベント | 遅れた場合の影響 |
| ① | 基礎の完了 | 躯体着工が遅れ、上棟時期がずれ込む |
| ② | 躯体の上棟 | 仕上げ工程全体の圧縮が始まる |
| ③ | 足場解体の完了 | 外構着工・外壁検査が遅れる |
| ④ | 外構の着工 | 竣工・引き渡しに直結する |
| ⑤ | 竣工・開店日 | 絶対に動かせないゴール |
これらのイベントをゴールから逆算して配置する。「このイベントが遅れると、全体がどう影響するか」を常に頭に入れながら動く。それが引き算の工程ではないかと感じている。
実際にあった場面——引き算で考えなければ見えなかったこと
いくつか経験した場面をご紹介したい。
【場面① お正月休みを挟んでの躯体工程】
担当主任の工程表では、2階床の打設が1月にずれ込む計画になっていた。問題は、その主任が自分で作った工程表を絶対だと思い込んでいたことだ。全体工程表と照らし合わせれば、先々に大幅な遅れが予想されることは明らかだった。しかし規格的なマンション工事ばかりを経験してきた現場では、そうした臨機応変な判断を学ぶ機会がなかなかない。年末をめがけて舵を切る必要があると判断し、工程を前倒しした。
【場面② 躯体工事とサッシ搬入がかち合った】
「サッシが取り付けられない」と泣きが入った。躯体の進捗とサッシの搬入時期が重なってしまったのだ。交渉の末、無事に取り付けることができたが、少し早めに相談してくれれば前もって動けたと感じた。
【場面③ 型枠と鉄筋の調整、インサートのお願い】
型枠と鉄筋の調整も、少し段取りすれば解決できることが放置されていることがある。インサートの件も、一言相談してくれれば対応できることだった。難しい判断ではない。相談するという一歩が踏み出せていないだけのことが多いように思う。
突破力とは、特別なものではないかもしれない
これらの場面を振り返ると、突破力とは特別なスキルではないように思う。
全体工程表を見る習慣。先を読む感覚。そして「相談する」という当たり前のこと。
「こうなると思うのですが、どうしたらいいでしょうか」——この一言が言えるかどうかが、実は最も大切なのではないかと感じている。
難しい交渉や判断は、経験を積めば少しずつ身についていく。しかし相談するという習慣は、今日からでも始められる。突破力はその先にあるのではないかと思っている。
自信を過信しない謙虚さ——どの年代にも必要なこと
足し算の工程を否定したいわけではない。積み上げの丁寧さは、大規模工事で鍛えられる大切なスキルだと思っている。
ただ、時には全体工程表を眺めてみてほしい。ゴールから逆算して、どこが急所かを考えてみてほしい。そして困ったことがあれば、まず相談してみてほしい。
そしてもう一つ、どの年代にも共通して言えることがある。
自信は大切だ。しかし自信を過信しない謙虚さは、若手にもベテランにも等しく必要ではないかと思っている。
自分の工程表が絶対だという思い込みも、長年の経験が正しいという思い込みも、現場では思わぬ落とし穴になることがある。
謙虚さを忘れない。それが現場監督として長く生き続けるための、一番の力ではないかと感じている。


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