工期短縮の本音——35年の経験から言える、本当に効く方法と限界

「工期が遅れた。なんとか取り戻せないか」

現場監督なら誰でも経験する場面だ。でも正直に言う。工期短縮は、思っているほど簡単ではない。

「人を増やせばいい」は幻想だ

よく言われる解決策が「マンパワーで挽回する」というものだ。人員を増やして一気に取り戻す。聞こえはいいが、現実はそう甘くない。

今の建設現場は深刻な人手不足だ。職人の数が減り続けている。そもそも平日に急に人員を増やそうとしても、集められないケースの方が多い。

仮に集められたとしても、別の問題がある。

建物は一つ一つの工種が連携して出来上がる。大工が3人になってスピードが上がっても、次の左官が追いつかなければ意味がない。左官がどんどん進んでも、後工程の吹付やタイルが追いつかなければ同じだ。

一業種だけ人を増やしてうまくいくことは、まずない。

ただし例外もある。大工作業は人数が増えれば比較的スピードが上がりやすい。1人が3人になれば次の工程に早く渡せる。これは事実だ。でもそれだけで全体の工期が縮まるかどうかは別問題だ。

現実的な答え——閉所日を開ける

では何が効くのか。

35年の経験から言えば、一番現実的なのは「閉所日を開けること」だ。具体的には土曜日、日曜日、祝日だ。

今の建設業界は週休2日制を推奨している。その流れとは真逆になる。だからお勧めはしない。でも工期を取り戻す手段として、これが一番確実だというのが現実だ。

工期が遅れる原因は多岐にわたる

そもそも工期遅延の原因は様々だ。35年間でいろんなケースを見てきた。

埋設物が出た。杭工事で重大な欠陥が発覚した。躯体工事で問題が起きた。防火戸の認定再取得が必要になり、防火戸が入ってこない。そして今は、塗料・防水材料・断熱材・ナフサ関連製品の供給が滞っている。

原因によっては、どんなに人を増やしても、閉所日を開けても、どうにもならないケースもある。資材が来なければ工事は進まない。

それでも日曜作業を選ぶとき

会社は推奨しない。若手はついてこない。業界の流れにも逆らう。

それでも、やるしかないときがある。

埋設物、杭の欠陥、資材の遅延——どれも自分ではコントロールできない原因で工期が押している。施主との約束がある。竣工日は動かせない。

そういうとき、所長として決断する。日曜日を開ける。自分が現場に立つ。

若手に強制はできない。でも自分は行く。それが35年間、現場を守ってきた人間としての責任だと思っている。

格好いい話ではない。業界が変わっていく中で、時代遅れと言われるかもしれない。でも目の前の現場を、施主との約束を守るために、それが今できる唯一の選択であることもある。

工期短縮の「究極の選択」とは、そういうものだ。

責任の重さを、あなたはわかるか

若い現場監督に聞きたい。

自分がこの立場だったら、同じようにするか。

施主は何年もかけてお金を貯めた。家族のために、事業のために、この建物を待っている。竣工が遅れれば、引越しが延びる。テナントが入れない。損害が出る。信頼が崩れる。

その重さを、所長は一人で背負っている。

会社の方針、業界の流れ、若手の気持ち——全部わかっている。でもその上で決断するのが所長の仕事だ。

「やりたくてやっているわけじゃない。でもやらなければならない。」

それが現場を預かる人間の責任だ。35年間、その重さと向き合い続けてきた。

格好いい話でも、自慢話でもない。ただ、目の前の仕事に誠実でありたい。施主との約束を守りたい。それだけだ。

若い技術者たちにはいつか、この重さを自分のものとして感じてほしい。そのとき初めて、本物の現場監督になれると思っている。

工期遅延はお金の流れも狂わせる

もう一つ、若手に知っておいてほしいことがある。

工期が遅れるということは、お金の流れも遅れるということだ。

建設工事には節目節目に入金のタイミングがある。着工時、上棟時、竣工時——それぞれに中間金や完成金が動く。施主のお金の段取りも、そのスケジュールに合わせて組まれている。

ある現場で、上棟が数週間遅れた。たった数週間だ。でもその遅れが、事業主の資金サイトに合わなかった。結果、数千万〜数億規模の入金が1ヶ月以上遅れることになった。

会社の資金繰りに直接影響する話だ。

営業は顛末書を作成する。それなりの言い訳を並べてやり過ごす。でも現場がその原因を作ったという事実は変わらない。

工期を守ることは、品質を守ることであり、施主との信頼を守ることであり、会社のお金を守ることでもある。

現場監督の仕事の重さは、そういうところにも及んでいる。若手にはぜひこの現実を知っておいてほしい。

今夜も一杯やりながら、そんなことを考えている。

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