現場監督の仕事の中で、若手が最も苦手とするもののひとつが近隣対応だ。
驚くほど苦手な監督が多い。特に新築専門の監督はその傾向が強い。
近隣対応業者という存在
大きな現場では、事業主が「近隣対応業者」を手配するケースが多い。説明会の運営からクレーム対応・処理まで、前面に出て動いてくれる専門業者だ。
ただし施工会社として同席したり、直接対応したりする場面も少なくない。業者任せにできない場面は必ずある。
「やから」と思え——は半分本気
これは半分冗談だが、半分本気でもある。
都市部の近隣対応は独特だ。強く出てくる方も少なくない。でもそれを「やから」と思って身構えるのではなく、「それだけ真剣に訴えている」と受け止める。向き合い方ひとつで、相手の態度は変わる。
私が近隣対応を苦手としない理由
若い頃の経験が大きかった。
小さなリフォーム工事を数多くこなした。エンドユーザーと直接接する機会が多く、近所の方に声をかけたり、工事案内を配ったり、困りごとに対応したりすることが日常だった。
気づけば近隣対応への苦手意識が全くなくなっていた。むしろ「どうやって味方につけるか」を考えるようになっていた。
近隣を「敵」ではなく「味方」にする
現場は必ず迷惑をかける。
音の出る作業、ほこりや振動の作業、においの出る作業、夜間作業、道路の通行止め——数え上げればきりがない。
だからこそ、先手を打つ。作業の前に声をかける。「今日はうるさくなります、申し訳ありません」の一言だけで、相手の受け取り方が全然違う。
クレームが来てから対応するのと、来る前に動くのとでは、関係の質がまったく変わる。
近隣の方を味方につけると、現場はやりやすくなる。「あの監督さんはちゃんと挨拶に来てくれる」という信頼が積み上がると、多少の迷惑も許容してもらえるようになる。
紹介がオセロのように広がった
近隣対応への姿勢は、思わぬ形で返ってくることがある。
あるマンションでの工事がきっかけで、住民の方から別の工事を紹介していただいた。その方がまた別の方を紹介してくれる。オセロのように、ひとつがふたつ、ふたつがよっつと広がっていった。
一般のリフォーム工事でも、紹介を多数いただいた。
リフォーム工事において、紹介受注ほど確かなものはない。広告費もかからない。信頼が先にある。話が早い。
その紹介を生み出したのは、工事の品質だけではない。近隣への声かけ、困りごとへの対応、誠実な姿勢——そういった積み重ねが、人の心を動かしたのだと思っている。
近隣対応は「迷惑をかけないための義務」ではない。「信頼を築くための機会」だ。
見ている人は見ている
もうひとつ、習慣にしていることがある。
現場の前のごみは必ず拾う。自分たちが出したものでなくてもだ。両隣まできれいにする。誰が捨てたかわからないものでも、関係ない。現場の前が汚ければ、その現場の監督の姿勢が問われる。
「そこまでやるの?」と思う人もいるかもしれない。でも見ている人は必ず見ている。
毎朝きれいにしている現場を、近隣の方はちゃんと見ている。「あの現場の人たちは丁寧だ」という印象が積み上がっていく。その積み上げが、いざというときの信頼になる。
大きなことより、小さなことの継続だ。
近隣対応ができて一人前
近隣対応は地味だ。華やかさはない。でも現場を円滑に進めるために不可欠な仕事だ。
職人を束ねる力、施主と交渉する力、図面を読む力——それと同じくらい、近隣や第三者と良好な関係を築く力が現場監督には必要だ。
それができてこそ、私は一人前だと思っている。
苦手意識を持つ前に、まず声をかけてみてほしい。「工事でご迷惑をおかけします」その一言から、すべてが始まる。
今夜も一杯やりながら、そんなことを考えている。


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