楽観主義者が現場を動かす——困難な現場ほど、前を向ける人間が必要だ

現場の話


楽観主義者が現場を動かす

台湾のある大学で、父から約100億円の負債を受け継いだ理事長がいる。誰もが無理だと思った。だが彼は6年で黒字に転じた。その原動力を問われ、こう答えた。「悲観主義者は感情に支配されやすい。楽観主義者は意志が強く、精神が強い人です。父は何があってもあきらめない人でした。だから私も楽観主義です」。

なぜか、と考えた。楽観主義とは「なんとかなる」という根拠のない明るさではない。困難を前にしても感情に流されず、「どうすればできるか」を考え続ける力だ。その違いは、現場でくっきりと現れる。

約100億円父から受け継いだ大学の負債額6年赤字を黒字に転じるまでの年数80人→2万人父子二代で育てた学生数の変化

35年間、建設現場に立ち続けてきた。本当に強い管理職・職人は、例外なく楽観主義者だった。工程が遅れても「やり方を変えれば間に合う」と動き出す人間がいる。予算が厳しくても「ここを削ればいける」と算段する人間がいる。若手がミスをしても「これを教える機会だ」と前を向く人間がいる。そういう人間がいる現場は、不思議と空気が明るい。逆に悲観主義者が中心にいる現場は重い。一人の「無理だ」という言葉が、現場全体に広がっていく。

場面悲観主義者楽観主義者
工程が遅れた時「無理だ」と感情が先に立つ「どうすれば間に合うか」を考える
若手がミスした時責めて終わる「これを教える機会だ」と前を向く
予算が厳しい時「できない」と立ち止まる「ここを削ればいける」と動き出す
現場の空気「無理だ」が全体に広がる「なんとかなる」空気が生まれる
挫折した時感情に支配されて折れる「次への基礎」と捉えて動き続ける

冒頭の理事長の父親はこんな言葉を残している。「いかなる事業でも、初めはただの思想にすぎない。行動を起こさなければ、何の結果も得られない。空論にふけるな。直ちに仕事に取りかかれ」。悩む前に動く。考え込む前に手を動かす。楽観主義者とは、まさに行動の人だ。そしてその姿が周りを動かす。

楽観主義は、上司から部下へと伝わっていく

楽観的に前を向く姿勢は、上司から部下へ、先輩から後輩へと伝わっていく。管理職が楽観主義者であることが、現場の文化を作る。「精神の継承ほど尊いものはない」——冒頭の理事長の言葉だ。

楽観主義は生まれつきの性格ではない。意志を持って選ぶ姿勢だ。管理職がまず前を向く。それだけで現場の空気は変わる。

現場に楽観主義の文化を作るために

  • 自分自身が「できる」という姿勢を見せ続ける
  • 困難な場面でも「どうすればいいか」を口にする
  • 部下のミスを責めず「次はこうしよう」と前を向く
  • 小さな成功を見逃さず、きちんと認める
  • 挫折した経験を「成長の話」として語る

現場で一番必要なのは、技術でも経験でもなく、前を向き続ける力かもしれない。楽観主義者が現場を動かす。35年たって、自らそう感じている。

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