無音はストレスになる——ラジコを聴きながら仕事する現場監督の話
働き方 / 現場環境 / 生産性
無音はストレスになる
——ラジコを聴きながら仕事する現場監督の話
現場監督歴35年以上 レオ管理職・経営者向け
私はラジコを聴きながら仕事をしている。無音状態での仕事は、正直ストレスになる。喫茶店にも飲食店にも、リラックスできる場所には必ず音がある。それは偶然じゃないと思う。
なぜリラックスできる場所には音があるのか
考えてみると、気持ちよく過ごせる場所には必ず音がある。
喫茶店にはBGMが流れている。飲食店には料理の音や話し声がある。自然の中にいれば鳥の声や風の音がある。逆に、完全な無音状態というのは、日常生活ではほとんど存在しない。
無音は「静けさ」ではなく「緊張」を生む。人間の脳は、無音状態を「何か異常が起きているかもしれない」と感知するようにできているからだ。だから無音の空間にいると、知らず知らずのうちにストレスが溜まっていく。
65dB
カフェの平均的な環境音。創造性を最も高める音量レベルとされる
86%
仕事の合間に30分音楽を聴いた後、唾液分泌量が増加した社員の割合(リラックス効果)
5日間
英国Mindlab Internationalが26人で実施したBGM効果実験の期間。BGMありの方が生産性が高いと実証
科学が証明するBGMの効果
感覚的に感じていたことが、科学的にも裏付けられている。
🎵 BGM・環境音が職場にもたらす3つの効果
🔇
① マスキング効果 BGMが流れることで、気になる雑音や他人の会話が耳に入りにくくなる。無音状態では些細な音でも気になってしまい、集中力が乱される。適度なBGMがその雑音を「マスク」して集中環境を守る。
😌
② ストレスホルモンの低減 音楽を聴くことで、ストレスに深く関わる「コルチゾール」の分泌が抑えられることが研究で示されている。無音でイライラしやすい環境が改善され、気持ちよく仕事に向かえる。
🤝
③ コミュニケーションが取りやすくなる 無音の緊張した空間では、声をかけることすら気が引ける。BGMが流れることで場の空気が和らぎ、自然なコミュニケーションが生まれやすくなる。
無音 vs BGMあり——職場への影響
無音状態 vs BGMあり——職場環境の違い
無音状態
BGM・環境音あり
些細な音が気になって集中できない
マスキング効果で集中環境が守られる
緊張感が漂い、ストレスが溜まる
リラックスしながら仕事に向かえる
声をかけにくい張り詰めた雰囲気
自然なコミュニケーションが生まれる
ストレスホルモンが増加しやすい
ストレスホルモンが低減される
では、どんな音楽がいいのか
研究データと私自身の経験から、仕事に合う音楽の条件が見えてきた。
🎵 仕事に合う音楽ジャンル別効果(研究データより)
| ジャンル | 効果 | 向いている作業 |
|---|---|---|
| クラシック・ピアノ | 論理的・構造的な脳の整理。リラックスと集中の両立 | 書類作成・企画・思考系 |
| ジャズ(インスト) | リラックス効果。長時間聴いても飽きにくい | デスクワーク全般・長時間作業 |
| アンビエント・環境音 | 思考の邪魔にならない。カフェ音と同様の効果 | クリエイティブ系・アイデア出し |
| 自然音(波・雨・風) | 「1/fゆらぎ」でα波を促進。自律神経を整える | 集中したい時・ストレスが高い時 |
| 歌詞ありの音楽 | 言語を処理する脳の領域が歌詞に引っ張られる | ⚠ 文章作成・思考系には不向き |
| ラジオ(音楽のみ) | 曲の流れがあり単調にならない。情報も自然に入る | ✓ 長時間の現場作業・デスクワーク |
※ リクナビNEXT・各種研究論文をもとに作成。個人差があります。
共通するポイントは「インストゥルメンタル(歌詞なし)」であること。ボーカルが入っている音楽は脳の思考と衝突してしまうため、作業中のBGMとしてはおすすめできないという研究もある。
また最適なテンポは60〜80BPM程度。心拍数に近いリズムが、自然なリラックスと集中を両立させる。
🎙️ 私のおすすめ——ラジコの音楽専門チャンネル
昔のFENみたいに、DJなしで音楽だけが流れるチャンネルが好きだ。余計なトークがない分、思考の邪魔にならない。曲が変わるたびに気分もリフレッシュされる。情報も自然に入ってくる。無音よりずっといい。
私がラジコを聴きながら仕事をする理由は、単純だ。音楽だけでなく、ニュースや話し声が流れているから情報も自然に入ってくる。気づいたらブログのネタになっていることも多い。
私は80年代・90年代前半の音楽が好きだ。チープ・トリックをはじめ、カウントダウンTVで流れていたあの時代の曲たちは今でも離れない。若い人が何を聴いているのかよくわからない。自己中かもしれないが、まあそれでいい。
でも面白いことに気づいた。今の若者に人気の「ローファイヒップホップ」というジャンルがある。ゆったりしたテンポ、歌詞なし、カフェの雰囲気——世界中で仕事・勉強用BGMとして聴かれているらしい。
🎸 世代は違っても、本質は同じ
| 世代 | 好きな音楽 | 共通点 |
|---|---|---|
| 50〜60代 | 80〜90年代ロック・ポップス チープ・トリック、カウントダウンTV世代 | 心地よいテンポ 聴き慣れた安心感 自然にテンションが上がる |
| 20〜30代 | ローファイヒップホップ・チルアウト YouTube・Spotifyで世界中に広まる仕事用BGM |
世代は違う。でも「心地よい音の中で仕事したい」という感覚は、どの世代も同じだ。好きな音楽で仕事するのが、一番いい。
35年間現場に立ち続けて思うのは、現場の雰囲気と音は切り離せないということだ。活気のある現場には音がある。職人の掛け声、機械の音、時に笑い声。その音の中で人は仕事をしている。
逆に、シーンと静まり返った現場は怖い。何か問題が起きているか、みんなが萎縮しているか、どちらかだ。
もう一つの「音への配慮」——トイレの話
音の話をするなら、避けて通れないテーマがある。職場のトイレだ。
狭い空間では音が響く。気にする人もいれば、まったく平気な人もいる。でもデータを見ると、その差は想像以上に大きい。
📊 トイレの「音」に関するデータ(TOTO調査・1,000人対象)
外出先のトイレで「音が気になる」と答えた割合
気になる 75%
気にならない 25%
※「気にならない」と答えた250人のうち191人は男性
| 気になる音の種類 | 割合 |
|---|---|
| 自分の排泄音 | 65% |
| 他人の排泄音 | 35% |
| 音姫を利用したことがある女性の割合 | 91% |
| 音姫を利用したことがある男性の割合 | 19% |
※ TOTO「外出先のトイレに関するアンケート」(2014年・1,000人対象)より
面白いのは、「音姫」が生まれたのは節水が目的だったという点だ。1988年に発売された音姫は、トイレで音消しのために水を何度も流す「二度流し」の無駄水を減らすために開発された。音への配慮が、結果として節水にもつながっていた。
また排泄の音を「恥ずかしい」と思う気持ちは日本人特有のものだそうで、海外では音姫自体が存在しない。これは文化的な背景も大きい。
🚻 現場監督として、トイレ環境への配慮
私は現場のトイレにも音への配慮をしている。仮設トイレでも、できる限り擬音装置を設置するようにしている。気にする人は確実にいる。特に女性スタッフや若い職人が増えた現場では、トイレ環境は働きやすさに直結する問題だ。
「そんな細かいことを」と思う人もいるかもしれない。でも私はこう思っている。現場もホテルやリゾートと同じ感覚で扱う必要がある。
ホテルのトイレに音への配慮があるのは当然だ。では現場は違うのか。そこで働く人たちへの配慮は、ホテルの宿泊客への配慮と何が違うのか。
どこまで気を配るか。それが管理職としての配慮の深さを示す。細かいところにこそ、その現場の本質が出る。
管理職へのひとこと——男社会よ、変われ
「静かにしろ」「集中しろ」と無音を強いる職場は、実は逆効果かもしれない。適度な音のある環境が、人をリラックスさせ、生産性を上げる。喫茶店が居心地いいのには、ちゃんと理由がある。
そしてトイレの音への配慮も同じだ。現場だからといって手を抜く理由はない。ホテルやリゾートと同じ感覚で環境を整える。どこまで気を配るか——それが管理職としての配慮の深さだ。
建設業は長い間、男社会だった。「現場なんだから多少不便でも我慢しろ」という文化が根強く残っている。でもその発想こそが、女性が定着しない理由であり、若手が去っていく理由だ。
BGMひとつ、トイレひとつ。その小さな配慮が、現場の文化を変える第一歩になる。男社会の「これくらい当たり前」という感覚を、今こそ疑ってほしい。
そして、もっと根深い問題がある。
セクハラ、パワハラ、マタハラ——女性に対するハラスメントは枚挙にいとまがない。「冗談だった」「昔はそれが普通だった」——そういう言い訳はもう通用しない時代だ。
問題は制度や法律だけではない。一人ひとりの意識が変わらなければ、何も変わらない。管理職・経営者がまず自分自身を変える。そしてその姿勢を現場に示す。それしかない。
音への配慮ができる管理職は、人への配慮もできる。細かいところに気を配れる人間が、女性が安心して働ける現場を作れる。それが建設業界を変えていくと、私は信じている。
カウンターから
今日もラジコを聴きながらこの記事を書いた。無音より、少し音があるほうが、言葉が出てくる気がする。
喫茶店に音があるのは、人間がそういう生き物だからだと思う。静けさより、温かみのある音の中でこそ、人は本来の力を発揮できる。
建設現場は男社会だった。でもそれは「過去形」にしなければならない。BGMひとつ、トイレひとつから始まる配慮が、現場を変え、業界を変えていく。
セクハラ、パワハラ、マタハラ——女性へのハラスメントは今も建設業界に根深く残っている。これは深い課題だ。制度だけでは変わらない。一人ひとりの意識改革が必要だ。
変わるのは今だ。難しいことは何もない。まず自分の現場から、自分自身から始めればいい。
どんな人にも使命がある。——それが私の信条だ。
今夜も一杯やりながら、そんなことを考えている。
※ 本記事はMindlab International、日本音楽療法学会、各種研究論文をもとにしています。



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