楽観主義者が現場を動かす——困難な現場ほど、前を向ける人間が必要だ
人材育成 / 現場管理 / 生き方
楽観主義者が現場を動かす
——困難な現場ほど、前を向ける人間が必要だ
現場監督歴35年以上 レオ管理職・若手技術者向け
ある対話録を読んで、膝を打った。「人間には悲観主義者と楽観主義者がいます。悲観主義者は感情に支配されやすい。楽観主義者は意志が強く、精神が強い人です」——この言葉が、35年の現場経験と重なった。
約100億円の負債を6年で黒字に転じた男
台湾の中国文化大学で理事長を務めた張鏡湖氏の話だ。
父が創立した大学を受け継いだとき、負債は日本円にして約100億円。アメリカでの安定した教員生活をなげうって、「父の悲願」を現実にするために帰国した。
命がけだった。無駄を省き、倹約を重ね、教員の質を高めた。教師の教え方についてアンケートを取り、2年間論文を発表しない教師には辞めてもらった。職員には待遇を改善するかわりに少数精鋭で他の2倍の仕事を要求した。
こうして6年で赤字を黒字に転じ、建物さえ増やした。
約100億円
父から受け継いだ大学の負債額(日本円換算)
6年
赤字を黒字に転じるまでにかかった年数
80人→2万人
父子二代で育てた大学の学生数の変化
その原動力を尋ねられたとき、張氏はこう答えた。
「人間には悲観主義者と楽観主義者がいます。悲観主義者は感情に支配されやすい。楽観主義者は意志が強く、精神が強い人です。父は、すごく楽観主義者でした。何があっても、あきらめない人でした。だから私も楽観主義です。大変な赤字でも頑張れました」
——張鏡湖氏(台湾・中国文化大学元理事長)
楽観主義は「根拠のない明るさ」ではない
楽観主義というと「なんとかなる」という根拠のない明るさと思われがちだ。でもそれは違う。
張氏の楽観主義は、100億円の負債の前でも「できる」と信じて行動し続けることだ。感情に流されず、意志を持って前に進む力だ。
悲観主義者 vs 楽観主義者——現場での違い
悲観主義者
楽観主義者
「無理だ」と感情が先に立つ
「どうすればできるか」を考える
困難を見て立ち止まる
困難を見て動き出す
問題が起きると周りに伝染する
前向きな空気を現場に生み出す
挫折すると折れる
挫折を「次への基礎」と捉える
感情に支配される
意志と精神で環境を動かす
現場で見てきた「楽観主義者」たち
35年間の現場経験の中で、本当に強い管理職・職人は全員、楽観主義者だった。
工程が大幅に遅れても「やり方を変えれば間に合う」と動き出す人間がいる。予算が厳しくても「ここを削ればいける」と算段する人間がいる。若手がミスをしても「これを教える機会だ」と前を向く人間がいる。
そういう人間がいる現場は、不思議と空気が明るい。困難が来ても、みんなが「なんとかなる」と思える現場になる。
逆に、悲観主義者が中心にいる現場は重い。一人の「無理だ」という言葉が、現場全体に広がっていく。
楽観主義は「精神の継承」である
張鏡湖氏は父の楽観主義を受け継いだ。「精神の継承ほど尊いものはない」という言葉が印象的だった。現場でも同じだ。楽観的に前を向く姿勢は、上司から部下へ、先輩から後輩へと伝わっていく。管理職が楽観主義者であることが、現場の文化を作る。
「空論にふけるな。直ちに仕事に取りかかれ」
張鏡湖氏の父・張其昀博士はこう語っていたという。
「いかなる事業でも、大小を問わず、初めはただの思想にすぎない。行動を起こさなければ、何の結果も得られない。最も大事なのは『為す』『やる』『行う』ことである。空論にふけるな。直ちに仕事に取りかかれ。みずから身をもって実践する者は、生気はつらつとして、永遠に若い」
——張其昀博士(中国文化大学創立者)
この言葉は現場監督への言葉でもあると思った。悩む前に動く。考え込む前に手を動かす。楽観主義者とは、まさに「行動の人」だ。
管理職として、楽観主義を育てるために
📋 現場に楽観主義の文化を作るために
- 自分自身が「できる」という姿勢を見せ続ける
- 困難な場面でも「どうすればいいか」を口にする
- 部下のミスを責めず「次はこうしよう」と前を向く
- 小さな成功を見逃さず、大げさなくらい認める
- 「無理だ」という空気を放置しない
- 挫折した経験を「成長の話」として語る
楽観主義は生まれつきの性格ではない。意志を持って選ぶ姿勢だ。何があっても前を向くと決めた人間が、現場を、会社を、そして業界を動かしていく。
カウンターから
100億円の負債を6年で黒字にした男の原動力が「楽観主義」だった。その言葉を読んで、改めて思った。
現場で一番必要なのは、技術でも経験でもなく、前を向き続ける力かもしれない。挫折はやがて成功に変わる——そう信じて動き続けた人間だけが見える景色がある。
どんな人にも使命がある。——それが私の信条だ。
今夜も一杯やりながら、そんなことを考えている。
※ 本記事は池田大作著『世界の指導者と語る』(潮出版社)所収の張鏡湖氏との対話録をもとにしています。


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