政府は「足りている」と言う。でも現場は違う——ナフサショックが建設現場を直撃している

施工管理


政府は「足りている」と言う。でも現場は違う——ナフサショックが建設現場を直撃している

緊急レポート / 建設業 / 資材高騰

政府は「足りている」と言う。
でも現場は違う。
——ナフサショックが建設現場を直撃している

現場監督歴35年以上 レオ管理職・経営者向け

今、建設現場はかなり厳しい状況にある。ナフサショックについて、テレビや新聞では「政府が対応している」「供給は確保されている」という報道が目立つ。しかし現場の実態は、そう単純ではない。

ナフサショックとは何か

2026年2月末、中東情勢の緊迫化によりホルムズ海峡が事実上の封鎖状態となった。日本が輸入の約7割を依存する中東産ナフサの供給網が、一気に不安定になった。

ナフサとは原油を精製する過程で得られる「粗製ガソリン」のこと。プラスチック・合成樹脂・塗料・接着剤・断熱材・防水材——建設現場で使うあらゆる素材の原料だ。

約7割

日本のナフサ輸入における中東依存度

約2倍

2週間でのナフサ価格急騰(600ドル台→1,100ドル前後)

最大20%

LIXILの水回り製品値上げ幅(秋には全製品一斉値上げへ)

影響を受けている建設資材

ナフサショックで直撃を受けている建材・設備

塗料・シンナー原料のナフサ不足で価格高騰・供給制限

断熱材調達困難・価格上昇。早期確保が必須に

防水材・シーリング材供給不安定。工程調整を迫られるケースも

配管材(塩ビ管など)価格上昇・納期遅延が発生

床材・壁紙樹脂系素材全般に価格転嫁が本格化

サッシ・建具LIXILが秋に全製品一斉値上げを正式発表

ユニットバス・キッチンTOTO・クリナップが一時受注停止→再開も納期不安定

接着剤・シーラント石油化学製品全般に影響が波及

私の現場でも、4月に動いた

私が担当する現場は7月末竣工。ギリギリセーフだった。

ただし、ただ待っていたわけではない。4月の段階で全業者に対して資材・材料の早期調達を一斉に指示した。それで何とか間に合わせた。

しかし他の現場はそうはいかない。改修工事の途中で資材が調達できずにストップしている現場がある。これから着工予定だった物件は、原価の上振れが読めず着工を見送っている。契約を先延ばしにしているケースも増えている。

「原価の上振れが読めない状況で着工するのは、経営リスクが高すぎる。」

——現場の管理職の本音

マンション価格はすでに限界に近い

ナフサショックの話をする前に、まず現状を整理しておきたい。

建設費高騰は今に始まった話ではない。首都圏の新築マンションは2026年3月の平均価格が1億413万円と、2カ月連続で1億円台が続いている。中古マンションの成約㎡単価は71カ月連続で上昇している。

普通のサラリーマンが都心にマンションを買える時代は、もう終わりつつある。

再開発が次々と中止・凍結されている

建築費高騰の影響は、個人のマイホームだけではない。都市の再開発プロジェクトが各地で中止・延期に追い込まれている。

中野サンプラザとその周辺を再開発する「中野四丁目新北口駅前地区」では、建設費が当初想定の2倍程度まで膨らみ、計画が事実上白紙となった。

名鉄の5400億円規模の再開発プロジェクトも異例の停止に追い込まれた。建築資材インフレ・円安・労働力制約のトリプルパンチが背景にある。専門家は「建設コストが10%上昇するごとに投資回収期間が3〜5年延びる。コストが倍増すれば事実上の破綻を意味する」と指摘している。

大手・中堅の建設会社の約7割が2026年度内は大型工事を新規受注できないとみており、4割弱は契約済みの工事で工期が遅れる可能性があると回答している。

そこにナフサショックが加わった形だ。再開発の中止・頓挫は、今後さらに増えていく可能性が高い。

最終的には、消費者に返ってくる

こうした問題は、建設業界の中だけで完結しない。最終的には必ず消費者に影響が及ぶ。

新築住宅の建築費が上がる。リフォームの見積もりが想定より大幅に高くなる。工期が延びて引き渡しが遅れる。最悪の場合、契約したはずの工事が途中で止まる。

⚠ 消費者・施主が知っておくべきこと

  • 新築・リフォームの見積もりは、現時点の価格が今後も維持される保証はない
  • 契約後でも資材高騰を理由とした追加請求が発生するケースがある
  • 工期の延長・資材不足による工事ストップが起きる可能性がある
  • 都市部の再開発中止により、住環境の整備が遅れるリスクがある
  • 中小業者の経営悪化による突然の工事中断にも注意が必要だ

施主・消費者の立場からすれば、「なぜ急に値段が上がるのか」「なぜ工事が止まるのか」と戸惑うのは当然だ。だからこそ管理職・現場監督として、現状を丁寧に説明する責任がある。

⚠ 管理職・経営者が今すぐ把握すべきリスク

  • 改修・リフォーム工事中の物件が資材不足でストップするリスク
  • 新規着工物件の原価が契約時の想定を大きく上回るリスク
  • 6月以降、第3波の値上げが予測されており、さらなるコスト増が見込まれる
  • 都市再開発プロジェクトの中止・延期による受注喪失リスク
  • 資材確保できない中小業者の経営危機・倒産リスク

今、管理職にできること

現場監督35年が考える、今すぐ動くべきこと

1

着工予定物件の資材を、着工3カ月前から早期確保に動く。「必要になったら発注」では間に合わない。

2

施主・発注者に現状を正直に説明する。価格上振れの可能性を事前に共有しておくことが信頼を守る。

3

代替素材の情報を今から収集する。石油依存度の低い断熱材や素材への切り替えを検討する。

4

下請け・協力業者の調達状況を定期的に確認する。業者任せにしていると、竣工直前に発覚するリスクがある。

カウンターから

政府は「足りている」と言う。しかし現場では資材が止まり、工事が止まり、契約が止まっている。そしてその影響は、じわじわと消費者のところまで届いてくる。

35年現場にいて、これほど先が読みにくい状況はなかなかない。管理職として、施主への丁寧な説明と早めの対応が、今最も大切なことだと思っている。

今夜も一杯やりながら、そんなことを考えている。

※ 本記事の統計データは帝国データバンク、化学工業日報、日経ビジネス、各メーカー公式発表をもとにしています。(2026年5月現在)

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